参政党は、2022年の参議院選挙で注目を集めて以来、既存政党とは異なる政治的メッセージを発信し続けています。 「覚醒」「真実」「自然」「伝統」といった言葉を多用し、社会の不安や制度不信に訴えかける姿勢は、一部の有権者の共感を得ています。
一見すると民意に寄り添う政党のように見えますが、主張を詳しく検証すると、「民意を代表する」と称しながら、実際には主権者たる民衆の判断能力を軽視する構造が浮かび上がってきます。
科学的合意からの逸脱
参政党が展開している政策や主張には、科学的根拠に乏しい、あるいは国際的な学術的合意と矛盾するものが多く含まれています。
ワクチンをめぐる主張
参政党は、mRNAワクチンが「遺伝子を改変する可能性がある」「体外へ有害物質を放出する(いわゆる“シェディング”)」といった内容を繰り返し主張しています。 党代表の神谷宗幣氏自身も、動画やSNSにおいてこれらの見解を広めています(例: YouTube出演、 X投稿)。
これらの主張は、WHOやCDC、EMA、厚生労働省など、世界中の公的機関によって繰り返し否定されており、現在の科学的根拠に基づく医学的評価とは明確に矛盾しています。
専門家・制度に対する根深い不信
医療・学術機関に対する敵対的姿勢
参政党は、新型コロナに関する医療政策全般に対して「支配層による操作」「利権による歪み」などといった言葉を用いて批判しており、PCR検査やマスク着用、ワクチン接種などについても「洗脳」「同調圧力」と位置付けています。 出典:一橋大学GGRレポート
医師会や製薬業界、国の専門委員会などが提示する統計や評価も、「偏った情報」「国民を騙す道具」として扱われており、専門性そのものの正当性が認められていません。
国際秩序や制度手続きに対する敵意
参政党は、WHOによるパンデミック条約や、日本政府の緊急事態条項の議論についても、「主権を奪う」「監視国家化につながる」として強く反対しています。 出典:参政党公式資料
これらの国際的な制度設計や協調体制に対して、「真の狙いは支配と抑圧である」とする見方を公に表明しており、行政・医療・国際協定といった制度全般に対して、制度的根拠を提示することなく広範に疑念を表明する姿勢が顕著です。
“覚醒した市民”と“騙された大衆”の構造
参政党の運動には、「真実を知っている少数派」が「情報弱者である多数派」を目覚めさせる、という構造が前提となっています。 実際の発言や演説では、「メディアに騙されている人々」「洗脳された大衆」「覚醒していない国民」といった表現が頻繁に使われています。
このような姿勢は、「主権者としての民衆」の理性を尊重するものではなく、民衆を分断し、一定の価値観に従う者のみを“真の民意”とみなす態度であると評価できます。
結びに
参政党の主張は、形式上は「民意重視」や「草の根の政治参加」を掲げています。 しかし、その実態は、科学的根拠より信念や直感を優先し、専門知を敵視し、民衆を選別し、制度そのものに包括的な不信を抱くという、きわめて反制度的かつ選民的な傾向を示しています。
こうした態度が政権運営に持ち込まれた場合、制度の透明性、専門性、予測可能性が損なわれ、国民生活のあらゆる分野において深刻な混乱を引き起こす可能性があります。
民意とは、単に多数派の感情や直感ではなく、情報・検証・討議を経て形成されるべき熟慮の判断です。 それを支える制度や専門性を信頼できない政治に、民意を語る資格があるとは言えません。